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第60話 沈黙の写し

last update Tanggal publikasi: 2026-10-05 11:20:30

王都へ送る追加報告は、夜明け前に封じられた。

 香油売りリュカの所持品。

 白石の指輪。

 白蔦小印つきの指示書。

 香り袋と蔦模様の金具。

 王都銀貨。

 そして取り調べ記録の抜粋。

 どれも、単独では刃になりきらない。

 けれど並べれば、形になる。

 レティシア・エーヴェルシュタインは、封蝋が冷えるのを待ちながら、机の上に残した写しを見つめていた。

 リュカは多くを語らなかった。

 名も曖昧。

 出所も曖昧。

 指輪も、香油箱も、銀貨も、すべて「覚えていない」「預かった」「知らない」で押し通そうとした。

 だが、沈黙にも癖はある。

 白蔦の意匠を見た時。

 ヴァイスナー家の名を聞いた時。

 封印箱の原本という言葉が出た時。

 そのたびに、彼はほんのわずかに反応した。

 人の心は、完全
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